安定した室内環境を維持する住宅の設計する際、「アクティブデザイン」と「パッシブデザイン」の2つのアプローチがあります。
アクティブデザインは先進のシステムや家電を用いることで室内環境を安定させる手法です。
一方のパッシブデザインは自然な要素を活用して快適な環境を作り出す手法です。
どちらの手法にもメリットやデメリットがありますが、住宅を設計する際には2つを組み合わせることでそのメリットを最大化し、デメリットを打ち消し合うことができます。
この記事では、アクティブデザインとパッシブデザインについて詳しく解説し、両者を組み合わせることで得られるメリットについて紹介します。
- アクティブデザインの概要
- パッシブデザインとの比較
- アクティブデザインとパッシブデザインの融合とそのメリット
住宅を設計する際には、快適性だけでなく、環境に配慮した設計が求められます。しかし、それらを両立することは簡単ではありません。
アクティブデザインとパッシブデザインを組み合わせることで得られるメリットを理解し、より快適で環境に配慮した新築を考えてみましょう。
アクティブデザインとは先進技術による住まいの快適さを得る方法

アクティブデザインの概要と特徴
アクティブデザインとは、建物の内部環境を快適に保つために積極的に設備をコントロールする設計手法です。
空調システムや照明設備、換気設備、家電などがアクティブデザインの要素として挙げられます。
パッシブデザインとは異なり、設備を駆使することで快適性や省エネを実現することが特徴です。
アクティブデザインの要素
- 高効率空調システム
- 熱交換機能付き第一種換気システム
- 太陽光発電システム
- エコキュートやエネファームなどの高効率給湯システム
など
アクティブデザインの目的
アクティブデザインの主な目的は、建物内部の環境を人工的にコントロールすることで、快適な居住環境を実現することです。さらに、省エネを実現することで、電力消費量を削減し、環境にやさしい住宅を実現することも目的としています。
さらにアクティブデザインによって、快適な環境を維持することが更なる目的です。
居住者が快適な環境で生活することができるため、健康維持や生産性の向上につながります。また、省エネを実現することで、CO2排出量の削減やエネルギー費用の削減につながり、環境負荷の低減にもつながります。
パッシブデザインとは自然エネルギーを活用した建築手法

パッシブデザインの概要と特徴
パッシブデザインとは、建築物の外皮強化や設備の自然エネルギーを利用することで快適な居住環境を実現する設計手法のことです。
建物に入ってくる日射や熱、風などの自然エネルギーを最大限に利用することで、居住環境を快適に保つとともに、省エネ効果も期待できます。
パッシブデザインでは、建築物の向きや形状、窓の位置や大きさ、断熱材や遮熱材の使用、自然換気などの工夫が重要となります。
パッシブデザインの要素
- 太陽光・太陽熱
- 自然風
- 地熱
など
パッシブデザインの特徴は、自然エネルギーを最大限に活用することで、快適な居住環境を実現すると同時に、省エネ効果を高めることができる点です。
建築物の外皮や設備を利用するため、設備機器の設置や運転コストが不要であるため、ランニングコストを抑えることができます。また、外部からの自然エネルギーの利用が前提となるため、地球環境に配慮した設計手法であるとも言えます。
パッシブデザインの目的
パッシブデザインの主な目的は、建築物が自然エネルギーを最大限に活用し、快適な居住環境を実現することです。
建物の外皮や窓、通風などの自然環境を利用することで、熱や光、風などの自然エネルギーを効果的に利用し、快適な環境を実現することができます。
また、省エネルギー効果を期待できることも、パッシブデザインの主な目的の一つです。
パッシブデザインの具体的な内容や、メリット・デメリットについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

アクティブデザインとパッシブデザインの比較

アクティブデザインとパッシブデザインの比較
アクティブデザインは、空調システムや照明設備、冷暖房設備、家電などを活用することで快適な環境を実現します。
対して、パッシブデザインは、太陽光の利用や断熱性能の向上、風通しの良さなど、自然環境と建物自体の性質を活かして環境をコントロールすることを目的としています。
アクティブデザインとパッシブデザインのメリット・デメリット
アクティブデザインの長所と短所としては、以下のような点が挙げられます。
パッシブデザインのメリット・デメリット
パッシブデザインの長所と短所としては、以下のような点が挙げられます。
このような設計にならないためにも、パッシブデザインの設計は経験のある腕が確かな建築士にお願いする必要があります。
以上のように、アクティブデザインとパッシブデザインにはそれぞれ長所と短所があります。建築物の設計や運用にあたっては、その目的や用途に応じて適切な手法を選択することが重要です。
アクティブデザインとパッシブデザインを融合するメリット
建物の内部環境を快適に保つために、アクティブデザインとパッシブデザインを組み合わせることが重要です。
アクティブデザインは、設備を駆使して快適性や省エネを実現する手法であり、パッシブデザインは、建物の形状や材料、自然エネルギーの活用などによって快適性や省エネを実現する手法です。
アクティブデザイン | パッシブデザイン | |
---|---|---|
メリット |
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|
デメリット |
|
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こちらの表を見ていただくと分かるのが、「アクティブデザインのデメリット」は「パッシブデザインのメリット」で打ち消し合えます。
そして逆も同じです。
アクティブデザインとパッシブデザインを融合する理由と効果

アクティブデザインとパッシブデザインの組み合わせによって、より高い快適性と省エネ効果が実現されます。
例えば、夏場の室温を快適な範囲に保つために、建物の外壁に断熱材を使用するパッシブデザインによって、室内の熱を外部に逃がさないようにします。
さらに、日差しが強い時間帯には、日射を遮る遮熱装置を設置して、室内温度を下げることができます。
このようなパッシブデザインによる取り組みと、冷房機器や照明の自動制御システムなどのアクティブデザインを組み合わせます。
そうするとより少ないエネルギーで快適な環境を実現できます。
パッシブデザインのみでは、外気温が急激に変化した場合や夜間など、快適な室内環境を維持することが難しくなる場合があります。
そこにアクティブデザインで有効な暖房設備を組み合わせることで室内環境をいじできます。
ただし、適切に設定しないと消費エネルギーが多くなってしまう可能性があります。
両者を組み合わせる。例えば、パッシブデザインで遮熱・断熱性を高めておけば、冷暖房システムの設備投資と運用コストを削減できます。
また、太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを取り入れたり、照明設備や家電製品の省エネ化を図ったりすることで、最小限のエネルギーでよりエコロジカルな建物に仕上げることも可能です。
このように、アクティブデザインとパッシブデザインはとても相性がいいのです。
アクティブデザインとパッシブデザインの組み合わせによる建築実例
One Angel Square(イギリス)
One Angel Squareは、イギリスのマンチェスターにあるオフィスビルです。このビルは、アクティブデザインとパッシブデザインの両方の要素を組み合わせています。
開放的な中庭を南向きに配置し、太陽からの熱を収集します。これは、 パッシブソーラーデザイン の一例です。斜めにスライスされた外観は、上層階と中庭に日光を通すために南に角度を付けてられています。
蒸気や熱を再利用するためのエネルギープラントもあります。
一方で、ビルの正面は、遮光材料を使用して夏場の日差しを遮ることができるようになっており、冬場の暖かさを保つために使用されています。
Green Lighthouse(デンマーク)
Green Lighthouseは、デンマークのコペンハーゲンにある環境に配慮した建築物です。地域暖房、太陽電池、太陽熱冷暖房、季節ごとの蓄電を組み合わせたエネルギーコンセプトで、新しい試みを行っています。
エネルギーコンセプトは、再生可能なエネルギーを最大限に活用することを目的としています。夏場の冷房だけでなく、冬場のヒートポンプの効率を高めるためにも太陽を利用するのです。太陽熱エネルギーを南向きの窓から太陽熱を直接取り込み、その熱は床暖房に利用されたり、蓄熱します。ヒートポンプは、太陽熱、地中熱、冷房を建物内で循環させることに使用します。これにより、太陽熱が不足した場合のみ地域暖房が使用されるため、地域暖房の最適な利用が可能になります。
Green Lighthouseでは、昼光が主要な光源となっています。この家は円形で、内部がくり抜かれ中央の階段があり、自然な煙突効果に寄って喚起されいています。屋根の窓から多くの日光が家の中を降り注ぎます。
グリーン・ライトハウスは、建築、素材、光を全体的な計画の中に統合することで、エネルギー消費を極めて低く抑えています。
まとめ:アクティブデザインとパッシブデザインは融合させるのがベスト
本記事では、住宅設計においてアクティブデザインとパッシブデザインを組み合わせることが重要であることを紹介しました。
アクティブデザインで快適な環境を得るのは比較的楽ですが、経済面、地球環境への負荷などに影響を与えることがあります。
一方、パッシブデザインは、自然光や風、太陽の角度などをうまく活用することで、エネルギー効率を高めることができます。
アクティブデザインの欠点をパッシブデザインを組み合わせることで克服でき、住宅の機能性と快適性を向上させながら、省エネルギー化を図ることができます。
そのため、住宅を設計する際にはアクティブデザインとパッシブデザインを両方考慮し、組み合わせることが重要であることを覚えておくと良いでしょう。
- アクティブデザインとパッシブデザインの違いは何ですか?
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アクティブデザインは、先進のシステムや家電で積極的に室内環境を整える手法です。
一方、パッシブデザインは、建物の自然な環境を利用して快適性を確保する設計です。 - 住宅でアクティブデザインとパッシブデザインを組み合わせるとどのようなメリットがありますか?
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アクティブデザインとパッシブデザインを組み合わせることで、それぞれのデメリットを補うことができ、環境、健康、光熱費の面でもメリットが得られます。
- アクティブデザインやパッシブデザインを導入することで、どの程度のコスト削減が期待できますか?
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建物の規模や設計によって異なりますが、省エネ性が高まることでエネルギーコストが削減されるため、中長期的には大きなコスト削減が期待できます。